外出制限でいろいろ厳しい昨今ですが、ご近所なので直行直帰のプライベートレッスンは実施中!
学習者さんは飲食店を経営しているので、お昼のテイクアウトを1人で対応してからの勉強です。夜は夜でデリバリー対応もあって忙しい中、がんばっていらっしゃいます。
前々回は「ひらがな」の書き方を初めてレクチャー。その後1回はお店のメニュー更新(テイクアウト対応)のアナウンスの文言サポートをしました。そして今回はひらがなの続きを勉強です。
長く住んでいても覚えない言葉は結構あるんだな
お店の文言をサポートしたとき、結構気づきがありました。ご本人がスルーしてきたフレーズや文型がたくさんありそうだということです。
すでに20年近く日本にいるのでちょっと意外でしたが、日常会話や仕事で触れる最低限の日本語だけだとそうなるのかもしれないのですね。
そのときは要望に応えて私が簡単な文章を起こしました。そして、どういう意味かを説明しました。その際にでてくる名詞など、念のため知っているか聞いて見ると「知らない」というのです。
これまでも渡されたテキストをそのまま載せていたようで、中に何が書いてあるかまではチェックしていなかった模様。やはり「みんなの日本語」はあたまからやっていったほうがよさそうだな、と思ったのでした。
会話の中で、知らないフレーズがあっても、いちいち聞き返さないケースが多いですよね。自分も英語の場合ニコニコしながらその場をやり過ごしてしまうので、自然なことだと思いました。1文字ずつは全部知っているけれど、まとまったときの意味がわからないなんてしょっちゅうですからね(苦笑)
そんなとき、聞き返して言葉で説明されてもわからない。だから諦める。この繰り返しで知らない言葉のスルー力が高まってしまうんですよねぇ。
素早い説明が難しい場合は、Google翻訳のお世話になってしまうことが多いです。「みんなの日本語」にも各国版の文法解説書があるくらいだし、プライベートレッスンに関しては別に直接法にこだわらなくてもいいかなって思いました。特に抽象的なフレーズは、翻訳してしまったほうが話が早く進みますしね。
1文字から単語にしてみたらどうなる?
さて今回は前回の続きで、「む」から1文字ずつひらがなの書き方を勉強!
小テストしてみたら、ちょっと忘れてしまったことやクセの復活なども見られました。なので、スマートフォンのアプリも使いながら書き方を練習。
マス目も使いながら、どの位置から書き出すとバランスよくなるかを解説。
前回に比べてバランスもよくなってきて、ハッとするほど綺麗なひらがなも出てくるようになりました!!
たとえばレッスンする前の「よ」がこちら。独習で見よう見まねで書いてたものです。
書き方を覚えたあとの「よ」がこちら! もう日本人より上手になってきた!
もう1文字1文字めちゃくちゃ真剣に書いてますから!
綺麗になってきたところで、単語にしてみました。
「きせつのやさい って書いてみてください」(←お店で使いそうな言葉)
記憶と集中力を総動員しますが、やはり頼りなげになってゆきます(苦笑)
「今、練習だから、1つずつはきれい! でも本当に書くときは言葉です。続けて書きます。たくさん書くと難しいですよね〜。だから、何度も練習しましょう」
自分がひらがなを練習したときはどうだったのだろう?
もうそんな記憶は45年も昔のことです(苦笑) 黒板に書かれた先生のきれいな文字を見ていたかな。おぼろげな記憶では、小学校の先生の板書はとても整っていて美しかった気がします。
めちゃくちゃ字が汚い日本人だってたくさんいます。だからここまで熱心にやる必要はあるかな、って気もするんですが……。どんな風に教わっていたか覚えていたらよかったのにな〜。
連続して書くための、シンプルなマスのノートもあるといいですね、なんて話もでました。
ん? ひらがなは丸い。○を描いてみて!
書いている文字を見ながら、どうアドバイスしたらいいか考えていました。どうしてもフランス語を筆記していたときの記憶が手に残っている。苦手そうなラインをみていたら気づきました。
ひらがなって、形が全体的にやわらかく、どちらかというと丸くありませんか。
全体が丸かったり、部分的に丸があったり。昔は毛筆でしたもんね。
「あ」「お」「ぬ」「め」「の」「ら」「る」など左から右に弧を描くように下がるものもがとても多い。そのラインに苦戦しているのがわかりました。
「ん? ちょっと○(丸)を描いてみてください」
「マルは上手に描けない」
人によってクセがあると思うのですが、学習者さんは、真上を起点に左回りで描きました。
私は下を起点に右回りに描きました。
「私、今気づいたんですが。ひらがなはマルいものが多いです。私のマルとあなたのマル、書き方が違います。ひらがなは、私のマルに似ているものがたくさんあります」
「! そうかもしれない」
「このマルをイメージしたらどうでしょう」
「私、カタカナは好き。線がまっすぐだから書きやすい。ひらがなは苦手。わかった!これが書けない! だから私ひらがなが好きじゃなかった!」
「ひらがなは丸いでしょう? この線は下からぐるっと書くマルの書き方に似てる。できない!って思ったら、こうやってマルを書いて、手の練習をしてみたらどうかな」
「ゼロ」しかり「オー」しかり。母語にもこのような書き方をする文字はないはずなので、書き慣れなくて違和感があったのかもしれません。
あくまでもこの方の場合ですが、ひらがなの練習のウォーミングアップに、マルを書いてみるのはいいかな、と思ったのでした。
将来かわいい丸文字になる可能性も捨てきれませんが、それはそれで可愛いかな(笑)
毎回達成感を感じてもらうためにどうしたらいいか
まだ音と文字が一致していないものもあるので、毎回レッスンの前に、ひらがなの小テストを入れて行く予定です。
毎回こちらが言うフレーズを書いてもらおう。簡単なディクテーションですね。そのときは、文字の見た目についての指摘は最小限に。こんな感じでいいかな。
音からスムーズに書けるようになったら、きっと読むのもスムーズになってくるはず。すなわち、テキストを使った勉強もしやすくなると思うのです。
書ける文字が増えていくことで、その分達成感を感じてもらえるといいのですが。それが次の意欲に繋がりますし。こういう点も日本語教師が意識したいポイントですよね。
友だちに話したら、今はパソコンやスマートフォンの時代。手で書く必要はある? と聞かれました。それは人それぞれかな。別にもう書けなくてもいいっていう人もいるかもしれない。役所で自分の名前と住所、電話番号が書ければOKっていう人もいるかもしれない。
実際、このテクノロジーの進化が、日本語の漢字の使い方に影響を与えています。前述の通り、書けなくてもパソコンやスマートフォンを使えば変換できるようになった。そのため、書けなくても使うシーンが広がっているというのを国も理解しているのです。
今回は「将来は、お店のメニューボードを自分で書けるようになりたい」という要望あるのです。それをサポートしていく予定です。
40も半ばを過ぎてから、1から勉強したいというのですから、本当に立派です。
ご本人のゴールがしっかりしているので、きっと大丈夫だと思っています(^^)
その人のために、自分はどうサポートできるか。これを考えているときが一番充実していますね。みんなこれに気づいて日本語教師の道にハマっていくのかも!