7月6日、世界初の全自動衣類折りたたみ機「/laundroid(ランドロイド)」が展示されている、セブン・ドリーマーズのイベントスペース「/ laundroid / gallery(ランドロイドギャラリー)」で、「co-innovaion base」というイベントが開催されました。
イベントでは、【医療×テクノロジー】医師&企業家と考える 「パフォーマンスアップのための睡眠改善」というテーマで、RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニックの医師 白濱龍太郎氏と、法人向けの睡眠改善プログラムを提供している株式会社ニューロスペース 代表取締役CEO 小林孝徳氏がそれぞれ講演。また、ヘルスケア事業部の事業部長 平田氏を交えた3人によるパネルディスカッションも行われました。
▼こちらが世界初の全自動衣類折りたたみ機「/laundroid(ランドロイド)」
いずれも非常に面白いお話だったのですが、まず今回はSleepTechベンチャーであるニューロスペースさんのお話をご紹介します。
どんな会社に何をしているのか興味津々!
普段私は個人的にスリープテックデバイスを探したり使ったりしております。ただどうしても個人の立場でしかスリープテックを語ることができない。最近は企業が会社をあげて睡眠改善に取り組みはじめていると知り、どんなことをしているのか、どのような成果があがっているのか気になっていたのです。
小学館の雑誌「DIME」のこちらの号では、スリープテックデバイス6製品をご紹介しています!(パジャマ姿で)
現在、法人向けに睡眠改善プログラムを提供している代表的な企業といえば「ニューロスペース」さんです。企業の睡眠改善プログラムっていったいどういうことをするのか、どれくらい効果があるのか、そういったことが分かって勉強になりました。
どのような企業が導入しているのかも紹介されましたが、やはり睡眠の問題がダイレクトに影響しそうなあんな企業、こんな企業のお名前も! それぞれの企業がどのような目的やモチベーションで睡眠改善プログラムを導入しているのかも紹介されました。
お話の中でもっともインパクトがあったのは、プログラム実施の結果見えてきたという一般ビジネスパーソンと、ハイパフォーマーの睡眠の違いでした。デキるビジネスパーソンとはやはりそこまで意識高かったか! と感心。結果を出す人は、睡眠にも気を使っていたようです! 説明の中に、ちょいちょい参考になるテクニックが含まれていて、充実した20分でした。
知った名前がずらり! 睡眠改善に取り組んでいる企業とは?
ニューロスペースでは、睡眠を計測する独自の睡眠センシングデバイスやアルゴリズムなども開発。法人毎に睡眠の問題に繋がりやすい生活習慣や質問、悩みなどをきっちりヒアリングし、現場にあったオーダーメイドの睡眠改善プログラムを提供しているとのこと。ときには社内に新設される仮眠室などのプロディースや監修、コンサルティングも行い、過去2年間でサポートした企業は約50社、従業員数では1万名に上るといいます。
▼株式会社ニューロスペース 代表取締役CEO 小林孝徳氏
「企業特有の睡眠の悩みを分析して、カスタマイズした、その企業のに特化した睡眠改善プログラムを提供しています。研修会という形でノウハウを提供したあと、1ヶ月後くらいに同じアンケートをとって、どれくらい睡眠が改善したかを人事の方や労務部の方に報告しています」(小林氏)
具体的にどんな会社が取り組んでいるのか紹介されましたが、よく知る企業が名を連ねておりました。名前を聞けばああ〜!と思うのは吉野家やANA。他にもシフト勤務の工場を持つクボタ、名刺管理サービスでおなじみのSansan、ふとんの京都西川、三菱地所などが紹介されました。
そもそも日勤と夜勤の繰り返しがやむなしという職場で、ライフスタイルを改善しましょうというのは無理な話し。日付変更線も待ってはくれません。
「そういう不規則な勤務体制やシフトの中でもベターなもの、できることを現実的にご提案しています。吉野家さんでも現場で牛丼を作る店長さんと、本社でデスクワークされる方ではまったく睡眠のパターンが違ってきますし、そういった職種や部署、勤続年数、男女差などで睡眠の傾向を分析しています。シフト情報や現場の工場で働かれる方にインタビューもして、睡眠の悩みの実態を把握して、オーダーメイドなプログラムを作っています」(小林氏)
ふとんを扱う京都西川さんの場合は、睡眠改善ではなく、販売を担当される方が正しい知識で顧客に説明できるようなサポートを行っているそうです。
起きているときの手での触り心地や、腕で押した反発力などで寝具を選びがちで、それが失敗のもとになったりしますから、現場の方が正しい知識を持つのはいいことですよね。
三菱地所では、社員のための仮眠室を新オフィスに設置したそうです。
睡眠改善プログラムの効果は?
2017年2月に睡眠改善プログラムを導入したとある丸の内の大手企業では、なかなか寝付けない入眠困難、慢性的な睡眠不足、中途覚醒、早朝覚醒、起きられない起床困難、寝ても疲れがとれない熟睡困難、昼間眠くて生産性が下がるといった問題があったそうです。
「プログラムは医療機関の方に監修やご協力いただいていますが、我々は医療機関ではございませんので、薬を処方することはできません。その代わり眠りの技術を提供することで生活習慣を改善したり、行動変異を起こさせます」(小林氏)
改善プログラム実施後、起床困難が半分くらいに減少、慢性睡眠不足が20%減少という成果が得られたといいます。さらに仮眠をする人が10%ほど増え、午後の生産性の低下や、帰りの電車の中での居眠りが少なくなってきたといいます。
Sansanでは「仮眠はサボりの時間ではない。投資であり、攻めの眠りなんですよ」と説明したところ、エンジニアの方が仮眠前に「 今から攻めて来ます! 」というようになったそうです。なんかいいですね。
企業が睡眠改善プログラムを導入するモチベーションとは?
会社をあげて社員の睡眠改善に取り組もうというところは、まだまだ限られていると思います。前述の吉野家やANAは非常に分かりやすいですが、いったいどういうきっかけで導入を決意するのでしょうか。小林氏は「主に3つに分類できる」と説明します。
1つは良質な睡眠が取れることで、生産性、集中力、決断力があがり、それにともなってリーダーシップも向上することで、業務が効率化すること。企業としては売上げに直結するから、というもの。きちんと眠ると脳の思考や社会性を司る部位が正常に働くので、能力を発揮しやすくなるのです。
2つめはリスク軽減やコスト削減。物流業界や運送業界は交通事故という人命にも関わる大問題に発展するので、これを避けようというわけです。国交省の規則改正により、乗務の前に睡眠不足のチェックが義務化されたことも影響しているそうです。
3つめは人材戦略やCSRの点だそうです。
「不規則な勤務体系がやむを得ない場合、そこで働きたくないといって人材が集まってこないということが問題になってきてしまいます。不規則な勤務体系だけれども、こういうプログラムを従業員に提供しているということで、人材が集まってきやすい環境を整えると同時に、離職率などを軽減する取り組みとして導入いただくことが多いです」(小林氏)
これからどんどん若手が減り、労働力の確保が大変になっていくのだと思うのですが、嫌われない職場にするために導入するというのはなるほどと思いました。
ハイパフォーマーの睡眠は凡人とは違っていた!
非常に分かりやすくて面白かったのが、一般的なビジネスパーソンと会社から比較的評価が高いパイパフォーマーの睡眠パターンの違いです。ハイパフォーマーは睡眠も戦略できだった!
一般的なビジネスパーソンの場合、ベッドの中でダラダラ、起床時間がバラバラ、ベッド以外の場所で居眠り(電車やソファ)しています。
▼一般的なビジネスパーソンの睡眠パターン例
一方、ハイパフォーマーは起床時間がほぼ一定。平日は午後、眠くなるまえに戦略的に自分からとっています。ベッドの入ってからも比較的すぐ寝ています。ベッド以外で寝ていることもほとんどありません。
▼デキるビジネスパーソンの睡眠パターン例
「実は帰りの電車の中や、夕食後ソファなどで寝てしまうというのは、夜の本睡眠の深さ、質をなくすことに繋がるためよろしくありません。我々人間の睡眠というのはバネの原理に似ています。起きてる時間が長いほど、その後深く眠る力が溜まるという仕組みになっているため、ここで寝てしまうと影響がでてしまうんです。できる限り眠らないようにすることで、夜の睡眠の深さをいざなうのがポイントです」(小林氏)
眠くなるまでと考えて、ふとんの中でダラダラといろんなことをするのもよくありません。入眠困難を避けるには、ベッドは寝る場所であると体に記憶させることも大事。小林氏も「ベッドで眠りに関係ないことをすると、ここは寝る場所ではないと勝手に認識してしまうのでよくない」と断言されていました。
興味深かったのは、ハイパフォーマーの方の就寝時間がわりとバラバラだったことです。実は寝付きの時間帯にこだわっていないのだそうです。
「よく0時に寝て6時に起きる6時間睡眠を必ずやろうとして、23時くらいにやることがなくて眠れるにもかかわらず、ここで寝てしまったら1時間人生損するといって、本を読んだり仕事したりとかして起きてる方もいるんです。しかし、そうすると眠気のピークが過ぎてしまって、逆に0時になっても眠れないということがあります。ハイパフォーマーの方は、早く眠れるときは早く眠る。仮に残業などで遅くなったとしてもネガティブに考えず、4時間しか眠れなくても、その睡眠の質を充実させて、足りない分を昼間で補うというようなことを実戦しています」(小林氏)
睡眠時間が足りなくてもネガティブに考えないから、逆にストレスを抱えずに眠りに付ける。結果、短時間でも深いいい睡眠が出ているーーそんなことを想像しました。デキるビジネスパーソンは、睡眠も戦略的だったんですね。
ちなみに入眠に必要な平均時間はだいたいどれくらいか気になります。その点について小林氏は「だいたい5分から10分かけて、まどろみを感じながら徐々に寝付いていくというのが理想的な寝付き方です」と教えてくれました。「どこでも3秒で眠れる!」と自慢する方がいますが、それは慢性的な睡眠不足なだけで、何の自慢にもならないとも・・・・・・。
「睡眠は技術」だ
ニューロスペースでは「睡眠は技術」と教えているそうす。理論とテクニックを知ることで、結果的に睡眠改善につながるのだそうです。
「シフト勤務の方であっても、体に負担を掛けづらいような眠りの技術があります。短時間であっても眠りの深さを実現するための技術はありますので、そういった睡眠の技術をひとりひとりがしっかり学んで、セルフケアできる仕組みを作るのが弊社の取り組みです」(小林氏)
私も睡眠を学ぶきっかけになったのが、自分の不眠経験でした。睡眠のメカニズムを知ったことで、眠れないときでもネガティブにならずに済んでいるため、小林氏の話には大いに納得。
非常に勉強になるセミナーでした。法人向けの取り組み、今後もチェックしていきたいと思います!